2月15日~23日まで神戸のBshopにて開催されていた「出西展」。
初日の15日に出西窯の創立メンバーのお一人である多々納弘光さんのトークショーがあり、話を伺ってきました。
出西窯はイギリスの詩人で思想家・デザイナーのウィリアムモリスの
生活と芸術が一体となった暮らしの実現という思想に影響を受け、
島根の出西村という小さな村の青年5人が興した共同体の窯です。
そこから柳宗悦をはじめとした「民藝」の思想を拠り所に、
名を立てぬ無名の職人が作る、日常生活に沿った実用の器作りを目指して、
約70年に渡り、その想いを代々受け継がれながらさまざまな食器を製作されています。
柳宗悦の「民藝」について私なりにですが、ごくごく簡単に説明させてもらいますと、
「用の美」という芸術品ではなく日常生活の中で生まれた形にこそ真の美しさがある。
つまりは生活を繰り返していくなかで、生活用品が使い易いように形を変化させていき、
行き着いた形は世代を超えて愛されるものになり、その中に普遍の美しさがある。
というようなことを説かれています。
出西窯の食器を使っていると、いつものご飯が美味しそうに見えるし、丁寧に料理を作りたい気持ちになります。
私のような何となく出西窯の食器を使い始めてしまった者にも、多々野さんたちの想いが伝わってきているように思いました。
また、出西窯のメンバーの方々の根底には山本空外上人の「無自性」という考えがあり、
「無自性」とは「人は全て何かのお陰さまで生きており、自分の手柄など何ひとつない。謙虚でありなさい。」という考え方で、
出西窯の販売店の店名にもなっています。
実際にお会いした多々納さんはとても優しい雰囲気で、おそらく会場に居た誰よりも謙虚な話し方をされていました。
講演が終わり、食器と一緒に本を買い、多々納さんにメッセージを書いていただきました。
一字一字、申し訳なくなるくらい丁寧にゆっくりと書いていただき、
そんなところからも、この方は妥協せずに真摯に器作りに取り組まれてきたのだろうと想像しました。
私と出西窯との出会いは一枚のお皿を友人にプレゼントしてもらったのが始まりでした。
これからは多々納さんの想いに共感しながら少しずつ出西窯の器を集めていきたいと思います。